ビジネスモデルの変化に伴い、ロジカルシンキングの必要性が高まっています。
この記事では、論理的思考を鍛えることで得られるメリットをわかりやすく解説していきます。
ロジカルシンキングとはどんなものか、また効率的に高める方法を知ることでモチベーションを維持しながらのスキルアップを実現できるでしょう。
目次
ロジカルシンキングとは
まずは、ロジカルシンキングの概要を紹介していきます。
混同されがちな、「クリティカルシンキング」や「ラテラルシンキング」との違いを理解することでイメージが明確になるでしょう。
ロジカルシンキングの概要
ロジカルシンキングとは、直感や感覚で物事を捉えるのではなく、道筋を立てた論理的な思考法を指します。
1つの事象を結論と根拠に二分し、その繋がりの正確さ、論理が破綻していないかに重きを置く点に特徴があります。
一般的なビジネスシーンにおいては、伝えたいことを正確に伝えるために用いられることが多く、「結論は◯◯だと考えます。なぜなら◯◯」と理路整然と話せると、論理的思考をおこなえるとみなされるでしょう。
クリティカルシンキングやラテラルシンキングとの違い
ロジカルシンキングへの理解を深めるために、混同されがちな2つの思考法の概念も正しく理解しておきましょう。
似たニュアンスがあり、混同されることが多い「クリティカルシンキング」と「ラテラルシンキング」は次のように定義づけられています。
ロジカルシンキングを含めた3つの思考法には、”結論と根拠を切り分けて考える”という共通点があります。
ただし、得られる結果が異なるため、適切な論理が欲しい、アイデアの数を求めるといったテーマに応じた使い分けが必要です。
ロジカルシンキングを鍛えることで得られる6つのメリット
ここからは、ロジカルシンキングを鍛えることで得られるメリットを紹介していきます。
生産性やコミュニケーション力など、思考力を高めることでビジネスパーソンに必要なスキルを養成できます。
1.生産性が高まる
ロジカルシンキングを鍛えることで得られる1つ目のメリットが、生産性が高まるというものです。
課題や問題を明確にし、取り組む前に道筋を立てておくという過程を設けるだけで効率的な仕事をおこなえるようになります。
また、仮に仕事が思うように捗らなくても、ロジカルシンキングを使えばどこに問題があるのかを把握し、適切な対策を用意することができます。
いずれの場合でも、着手する前に道筋を立てるという準備が大切です。
2.コミュニケーション力が高まる
コミュニケーション力が高まることも、ロジカルシンキングを鍛えることで得られるメリットの1つです。
繰り返しとはなりますが、ロジカルシンキングは課題や問題を設定し、それを解決する道筋を立てる思考法です。
そのため、日頃の会話でも、「相手の話したいことを過程と結論に分ける」考え方を念頭に置いたコミュニケーションが可能になります。
日常会話ではプロジェクトのように明確な課題や問題はありませんが、話の構成をイメージした傾聴ができるようになるでしょう。
3.プレゼンテーション力が高まる
ロジカルシンキングを鍛えることで、プレゼンテーション力を高めることも可能です。
コミュニケーション力が高いビジネスパーソンは、相手のニーズに合わせた会話をおこなえるため、プレゼンテーション能力も高くなる傾向にあります。
もちろん、人前で話すシーンには慣れも必要になり、すぐに説得力のあるプレゼンテーションができるようになるわけではありません。
ただし、ロジカルシンキングを繰り返すことで話す道筋を立てられるようになり、自然と理解してもらいやすい話し方が身につきます。
4.スキルアップを効率化できる
ロジカルシンキングは、スキルアップの効率化にも役立つ思考法です。
論理的思考ができれば「コミュニケーションスキルを高めたい」、「ITスキルを高めたい」といった目標に対して、最適な方法の逆算も可能になります。
手当たり次第に努力しているビジネスパーソンも、ロジカルシンキングによって、スキルアップに適切な手段を選択しやすくなるでしょう。
5.モチベーションを維持できる
モチベーションの維持にも、ロジカルシンキングは役立ちます。
仕事や身体づくりなどの継続的な努力にはモチベーションが必要ですが、漠然とした思考による行動には飽きがきてしまうものです。
しかし、ロジカルシンキングの活用で、「目標が不明確だった」「急激に行動しすぎた」といった改善点の抽出が可能になります。
人は改善や変化をモチベーションに変えられるため、努力を継続できる人材へ成長できます。
6.目的に合わせた思考法を採用できる
目的に合わせた思考法を採用できることも、ロジカルシンキングを鍛えることで得られるメリットです。
先ほど紹介した、クリティカルシンキングやラテラルシンキングも論理的思考の一部ですが、本当の効果を実感するためには目的に合わせた使い分けが必要です。
「AとBの繋がりをはっきりさせるためにロジカルシンキングを使う」、「アイデアの数を出すためにラテラルシンキングを使う」といった使い分けにより、それぞれの思考法の良さを引き出せるわけです。
ロジカルシンキングを活用するための3つフレームワーク
ここからはロジカルシンキングの活用に有効な、3つのフレームワークを紹介していきます。
現時点で論理的思考力に自信がないという方も、演繹法・帰納法、ロジックツリー・ピラミッドストラクチャーを取り入れることでロジカルに物事を進めることができるでしょう。
演繹法・帰納法
ロジカルシンキングを活用するための1つ目のフレームワークが、演繹法と帰納法です。
似たような印象をもってしまいがちな2つの考え方ですが、下記で説明するように明確な違いがある手法です。
- 演繹法:いくつかの一般的なルールやセオリーをつなぎ合わせて結論を導き出す手法(ビジネスパーソンは仕事が早い→仕事が早い人は準備をしている=ビジネスパーソンは準備をしている)
- 帰納法:いくつかの事実から導き出された方向性をまとめることで結論に結びつける手法(A社のビジネスパーソンは人当たりがやわらかい→求人サイトでもA社の評価が高かった=A社は優れている企業だ)
演繹法と帰納法は異なる手法ですが、いずれもロジカルシンキングを活用した手法です。
結論の導き出し方が対照的に見える手法ですが、結論と根拠が正しく紐づけられています。
ロジックツリー・ピラミッドストラクチャー
ロジックツリーとピラミッドストラクチャーも、ロジカルシンキングを活用するためのフレームワークの1つです。
この2つのフレームワークの概念は、次のように定義づけられています。
- ロジックツリー:問題や課題を階層ごとに整理しながら分析する手法(事業部の売り上げが思わしくない→Aチームの売り上げ推移はどうか、Bチームの売り上げはどうか、Cチームの売り上げはどうか、といった形で枝葉をわけていく)
- ピラミッドストラクチャー:1つの結論から、その理由を細分化する方法(事業部の売り上げを上げるためにはユーザーのニーズを掴む必要がある:根拠1顧客アンケートの結果がよくない、根拠2マーケティングのCVがよくない といった形で1つの頂点から根拠を展開していく)
ロジックツリーとピラミッドストラクチャーは演繹法・帰納法と同様に、根拠と結果が理論立てられているフレームワークです。
さらに、原因追究や事実確認、問題提起といった目的に合わせた使い分けができるという特徴があります。
ロジカルシンキングの鍛え方とは?効率的な方法
最後に、ロジカルシンキングを鍛える方法を紹介していきます。
フェルミ推定やディベートなどの方法で、着実に論理的思考を鍛えていきましょう。
フェルミ推定
ロジカルシンキングを効率的に鍛える、1つ目の方法がフェルミ推定と呼ばれる方法です。
フェルミ推定とは、原子力の父として名高いノーベル賞物理学者であるエンリコ・フェルミの名を由来としており、1980年代から企業の入試試験に採用されている考え方です。
一般的に”地頭が良い”と言い換えられる概念でもあり、わからないことを推測をもとに結論づけるという流れで、正確さよりもロジカルな思考をもっているかがわかる手法です。
具体的な例を挙げると、「東京にある傘の本数は何本か」「日本の道路の長さは何キロあるか」といった問いに対して、結論とその理由を考えていきます。
***
参考として、考え方の例を「東京にある傘の本数は何本か」のお題で見てみましょう。
【前提条件】
東京にある全ての種類の傘の本数を数えるため、「通常の傘」、「折り畳み傘」、「日傘」の三種類の本数を求めます。
分類として「個人保有」、「店頭及び在庫」、「遺失物」の三つの場所にあるそれぞれの本数を全て求めます。
【アプローチ方法】
今回のケースでは傘のある場所に注目してそれぞれ下記の方法で計算したいと思います。
①個人保有:都内人口ベースから男女別の平均保有本数から算出します。
②店頭及び在庫:傘の需要と供給から算出します。
③遺失物:雨の降る日数及び紛失割合から算出します。
個人保有率を仮に「通常の傘」96%、「折り畳み傘」70%、「日傘」55%とすると、ここに人口をかけて大体の本数が出せます。
在庫については、傘の耐用年数と店頭本数、
遺失物は年間の降雨日数と外出割合と、傘を忘れてしまう人の割合から算出してみます。
あとは東京都人口1400万人をベースに計算してみましょう!
フェルミ推定のコツは、仮の割合や数値を経験則から置いてみることです。
慣れも必要ですので、例題に積極的に挑戦しましょう。
ディベート
ひとりでおこなうことはできませんが、ディベートもロジカルシンキングを鍛えるのに有効な方法です。
日本ではゼミにディベート授業を取り入れている教育機関が多くありますが、海外では企業研修にも討論が取り入れられています。
ただし、少し意識を変えれば、日常のコミュニケーションのなかでもディベートの要素を見出すことは可能です。
上司との打ち合わせや何気ない会話のなかで、「私は◯◯と考えます。なぜなら…」と穏やかに伝えることもロジカルシンキングを使ったコミュニケーションの一つといえます。
【まとめ】ロジカルシンキングを鍛えて仕事の生産性を高めよう
ロジカルシンキングは論理的思考とも呼ばれ、道筋立った考えを指します。
この思考法はデータの重要性が増している現代に、さらに必要性を増しています。
結論と根拠を二分して整理する頭の使い方は、多くのビジネスシーンで求められますので、苦手意識をもっている方も、今回紹介した方法を用いながら、論理的思考を身につけていきましょう。