皆さんは、RevOps = Revenue ops = Revenue Operations(レベニューオペレーションズ)という言葉を聞いたことがありますか?
日本ではまだあまり知られていませんが、コロナの影響で収益が下がったことによって、米国を中心に急速に発展している概念です。
米国では、LinkedInで「RevenueOperations」というキーワードで検索をすると、22,000以上の求人が見つかるほどです。
コロナ以前は、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどを部門ごとに縦割りし、それぞれ個別に最大化を目指す取り組みが中心でした。
しかしコロナ後では、リモートワークによる物理的な分断が加速していく中で、リソースや情報を統合して全体最適を目指す取り組みである「RevOps = Revenue ops = Revenue Operations(レベニューオペレーションズ)」が必要になると言われています。
今回はシリコンバレー経験者である筆者が、コロナ後から米国を中心に急速に広まっている「RevOps = Revenue ops = Revenue Operations(レベニューオペレーションズ)」について調査してまとめてみました。
成功に向けた4つのポイントまでご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
RevOps, Revenue opsとは何か?意味は?
RevOps = Revenue ops = Revenue Operations(レベニューオペレーションズ)とは、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスだけでなく、財務や会計的な視点も含め、それぞれの情報を統合することにより、効率的に収益成果を最大化する取り組みを指します。
テクノロジーツールの発達により、フロントオフィス(営業やマーケティング部門)やバックオフィス(財務や経理部門)などの部門の枠を超えて使えるツールが登場してきました。
クライアントごとに取得できる情報の種類や量を増やすことが可能になったことにより、米国企業ではコロナで下がった収益を取り戻すために、今まで以上にレベニューオペレーションズ(RevOps)に注力しています。
つまり米国企業たちは、現代のビジネス競争を勝ち抜くためには、より高度なマーケティング、セールス、カスタマーサクセス、ファイナンスの連携が必要であることを認識しているのです。
もともとのレベニューオペレーションズ(RevOps)の主な目的は、カネや情報などの社内リソースを集め、部門間のリソース分配、税金の調整などを行うことによって、収益を管理/調整することにありました。
しかし米国企業たちはいち早く、レベニューオペレーションズ(RevOps)の部門横断的な性質が、営業やマーケティング活動における計画・分析・戦略の領域においても価値をもたらすことに気がつきました。
レベニューオペレーションズ(RevOps)は、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスを真に実現するための土台を構築し、ビジネスの将来成長に役立つということです。
RevOps, Revenue ops構築に必要な4つの要素
レベニューオペレーションズ(RevOps)では、マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、ファイナンスの連携や情報統合が必要であると述べましたが、成功のために必要であると言われている4つの必須要素が存在します。
ポイント
- データ分析・予測
顧客やサービスのパフォーマンスを分析して成長を予測 - イネーブルメント
従業員のパフォーマンスの分析と最適化 - プロセス・システムの効率化
収益プロセス全体の一貫性を確保して業務フローを構築 - 収益戦略
上記3つの土台を構築して成長機会を見定める
これらを意識することにより、レベニューオペレーションズ(RevOps)は最適に運用されます。
ここからは、各要素の詳細をみていきましょう。
1. データ分析・予測
レベニューオペレーションズ(RevOps)では、データを基盤として意思決定していくことが最も重要であり、全ての基礎となります。
レベニューオペレーションズ(RevOps)の優れている点は、企業戦略に基づいた部門すべてのKGIやKPIを記録し、共有できることです。
収益の目標到達プロセス全体を常にモニタリングできることは、リアルタイムで問題を特定して調査できることを意味します。
レベニューオペレーションズ(RevOps)の運用に際して最初に行う作業は、全ての基礎となる「取得対象とするデータの選定」や「評価指標の選定」です。
適切な指標を見つける際は、 David Skok’s SaaS Metrics 2.0 中で示されているので、詳しくはこちらをご参考ください。
こちらはSaaS事業において中心に書かれていますが、サブスクリプションや定額制のサービス事業であれば、共通で参考になります。
要約すると、
ポイント
- LTV / CAC
- Pipeline Velocity
- Net Retention
の3つが重要な指標となります。
ここで注意しておきたいのは、指標とするデータやデータ収集/業務の統合に使用するシステムは、企業の成長ステージによって異なるということです。
初期段階の数人のスタートアップにおいては、ExcelやGoogleスプレッドシートでこと足りるかもしれませんし、グローバル規模の大企業では精度の高い最新のAIやテクノロジーを用いたシステムが必要になるかもしれません。
いずれにせよ、信頼できる唯一の情報源を確保することが大事になります。
共通管理するためのGoogleスプレッドシートや、統合された情報記録システム(CRMや会計ソフトのシームレスな連携)を必ず用意し、会計、マーケティング、セールス、内部情報など、可能な限り多くのデータが情報源に統合されている必要があります。
特に、取引プロセスの仕組みを構築したり、取引に関わる収益データの分析を専門に行う「Deal Desk」というものも米国のテック企業では普及しています。
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2. イネーブルメント
レベニューオペレーションズ(RevOps)では、「1. データ分析」で紹介した共通管理ツールの使用によって、一貫性のあるフロー、スムーズなデータの連携、責任所在の明確化などが、企業全体で促進されます。
さらに、レベニューオペレーションズ(RevOps)では、導入したソフトウェアやツールの定着状況、それらのパフォーマンス分析、それらが適切に運用されているかの判断など、といった作業も行われます。
日本では、セールスイネーブルメントという単語が少し広まってきましたが、欧米各国ではセールスの枠にとらわれず、従業員が利用している全てのツールや施策の効率化のための取り組み(=イネーブルメント)が行われています。
レベニューオペレーションズ(RevOps)のこうした仕組みから、通常はSalesforceやZohoなどのソフトウェアが使用されることになります。
そうしたツールを介して、各チームの分析に必要なデータが適切に収集されるのです。
収集されたデータに加え、レベニューオペレーションズ(RevOps)では、カスタマーサポートや技術的なサポートに関するデータ収集も行われます。
様々な問題(修正の必要があるバグ、回答待ちの質問、ライセンスに関する問合せ等)に対して、一貫した応対プロセスを確立したり、トレーニング資料や利用マニュアル(動画なども含む)を作成するために、そうしたデータの収集も必須となるのです。
また、レベニューオペレーションズ(RevOps)では、ボーナスや給料に関する情報が収集されることもあります。
これは財務と人事の面から、組織全体の運用効率化を図るためです。
3. プロセス・システムの効率化
レベニューオペレーションズ(RevOps)のプロセスと運用は企業の成長と共に成長し、中長期的にはより大規模で複雑なチームをサポートする土台になっていくための足がかりとして、コツコツと構築していく必要があります。
逆に会社の初期段階においては、レベニューオペレーションズ(RevOps)を最大化しようとしすぎると、組織が官僚的なってしまう危険性があり注意が必要です。
スタートアップなどの初期段階や、ベンチャーなどの成長期においては、意思決定のスピードが遅くなってしまうのは絶対に避けなければなりません。
官僚化を避けるためには、柔軟性と一貫性の両方を担保できる業務プロセスや社内システムが必要不可欠です。
以下はその例になります。
例
- 柔軟性の高いマニュアル(誰でも編集などができる社内Wikiなど)
- プレイブック(会社独自のノウハウ集や成功事例集)
- オンボーディング施策(パフォーマンスの高い人材を参考に)
- ヘルプやサポート(人だけでなくシステム化も含めた)
- Q&Aページ(社内関係者全て含めたもの)
- etc...
最近はGoogle workspaceやNotionなど、統合的なコラボレーションツールも安価になってきているため、従業員数人といった小規模な会社でも、必要最低限の業務フローや社内システムを構築することが出来るようになっています。
これらの企業ドキュメントなどは、レベニューオペレーションズ(RevOps)の運用に際し非常に重要となります。
これらにより、すべての従業員に必要な情報や知識の共有を行い、一貫性のある意思決定プロセスや迅速な組織運用が実現されます。
従業員内での情報の偏りがなくなり、顧客に対する一貫したユーザー体験の提供が可能になるということです。
このようにレベニューオペレーションズ(RevOps)は、サポート、データ分析、社内システム、業務プロセスなどとのスムーズな統合をもたらします。
レベニューオペレーションズ(RevOps)は、常に変動するデータやプロセスとともに、常に改善を重ねていくことがキモとなります。
4.収益予測・戦略
レベニューオペレーションズ(RevOps)は、会社の将来の戦略を導くことができるデータや情報を蓄積しています。
このことから、レベニューオペレーションズ(RevOps)にて蓄積されたデータは、企業戦略や年間計画の策定にも用いることが可能です。
サービスやキャンペーン、売上や収益の戦略だけでなく、人員計画、社内評価、ノルマおよび給与の決定にもそうしたデータは使用されます。
蓄積されたデータに基づいて、達成可能な目標と、それらの目標を達成するために必要なステップを容易に導き出すことも可能です。
また、レベニューオペレーションズ(RevOps)は、成長をサポートするために必要な、新しいツールや業務プロセスなどの選定/改善にも役立ちます。
さらに、未来の戦略をデータから先取りして予測したり、戦略立案をするといったことまで可能となります。
たとえば、「特定のセグメントが他のセグメントよりも収益が高い」ということや、「1つのマーケティングチャネルが高いLTVレートでコンバージョンしている」といったような現象を可視化できます。
このように、営業・マーケティング・CSの施策実行や、企画立案に対して非常に役立つのです。
RevOps, Revenue opsとは、企業収益を最大化するための基盤
レベニューオペレーションズ(RevOps)の成功のために必要であると言われている、4つのポイントをここで再度示します。
これらを意識することで、レベニューオペレーションズ(RevOps)は最適に運用さるのです。
ポイント
- データ分析・予測
顧客やサービスのパフォーマンスを分析して成長を予測 - イネーブルメント
従業員のパフォーマンスの分析と最適化 - プロセス・システムの効率化
収益プロセス全体の一貫性を確保して業務フローを構築 - 収益戦略
上記3つの土台を構築して成長機会を見定める
レベニューオペレーションズ(RevOps)により、企業はより全体的な視野を持ち、データ主導型になり、意思決定をより迅速に行うことができるようになります。
レベニューオペレーションズ(RevOps)とはすなわち、データ・ツール・業務フロー・戦略に基づいて、強力な基盤を構築することで得られる「収益最大化施策」であるといえます。
将来的には、日本でもより多くの部門や組織が、部門の枠を超えてコラボレーションし、レベニューオペレーションズ(RevOps)が機能するようになるでしょう。
むしろ、日本でこの概念が広まらないのであれば、グローバル競争での負けは火を見るより明らかです。
ある意味、日本で先駆けてレベニューオペレーションズ(RevOps)を取り入れることが出来れば、競合他社と比べてより良いポジションをとれることが可能になります。
コロナによってリモートワークによる物理的な分断が加速し、企業間取引がデジタル化していく中で必要になるのは、個別最適ではなく、リソースや情報を統合して全体最適を目指す取り組みです。
レベニューオペレーションズ(RevOps)に早くから取り組むことで、他社よりも成長を加速させて、リスクを軽減し、このコロナ危機を乗り越えることに繋がるでしょう。