メーカーの営業で苦労するのが、努力を重ねて競合他社を振り切って受注してきたのに、社内で技術部門から無理だと言われて、にっちもさっちも行かなくなることです。
技術担当者が頭ごなしに「NO」と言ったため、顧客ともめたり、違約金を要求される事態に陥ったことはありませんか。
営業部門と技術部門が対立する構図はよく見る風景ですが、決して看過できることではありません。
ここで部門間の対立という、内向きの負のエネルギーを、外向きのプラス作用へ転換できたら素晴らしいことですね。
また、内向きのエネルギーをより良い商品開発に向けられたら理想的ですね。
この記事では、営業マンと技術担当者双方の立場を理解と、そこから生じる6つの摩擦を理解することで、対立する構図から良い方向へ発展するための秘策をご紹介します。
目次
営業と開発の対立が生まれる4つの摩擦
メーカーの営業は、自社製品を他社製品と差別化して顧客に売込むプロ集団です。
自社製品の特徴や優れた点を顧客に理解してもらい、他社製品よりもメリットが大きい
と評価されれば、価格交渉を行って成約となります。
場合によっては、価格が重要なファクターになるケースも少なくありません。
摩擦1:営業による売るための悩み
世の営業マンは、常に予算達成、シェア拡大、利益確保を考えています。
そしてメーカーの営業は、確保した利益が今後の製品開発のための資金となることを理解しています。
価格競争力が十分ある間はよいのですが、製品が陳腐化したり、他社製品の仕様が優れている場合は、成約が難しい上、受注しても十分な利益が得られません。
その営業マンの悩みは、常に自社製品を売らなくてはならないことです。
日々の営業活動の結果、顧客から全幅の信頼を得ているにもかかわらず、自社製品の魅力が乏しいと成約は困難です。
それでも、何とか自社製品の利点をこじつけて、価格勝負で対応したりするのです。
他社に比べて見劣りがしても、自社製品を売るのがメーカーの営業なのです。
そんな時、他社製品を転売してでも売りたいと思う営業マンも相当数いるでしょう。
営業マンにとって仕様が劣ることが原因で、みすみす成約できるチャンスを失うことは、とても悔しい事です。
そのため、無いものねだりと言われようと、仕様を他社並みにして欲しいと常に思っているのです。
そして営業マンが失注の原因を、他社より劣る仕様のせいにしてしまうと、技術部門から見れば、営業力が足らない点はどうなるのかと不満が出ます。
摩擦2:開発担当による品質へのこだわり
技術担当は、自社の技術力を結集して、常に良い製品を世に送り出そうとしています。
そして顧客に喜ばれる製品開発を心がけています。
ただし、現場に出て直接顧客ニーズを取り込んだりすることは稀なので、手前勝手な製品となっている可能性があります。
技術担当者は、価格競争力を確保するために、生産性を向上させコストダウンを実現しています。
VA/CDと呼ばれる手法などで、常に効果的・効率的なコストダウンを図っています。
また、仕様で負けないように、可能な限りバージョンアップを行い、陳腐化を遅らせています。
その技術担当は、「良い製品なのに何故もっと売れないのだろう」と思っています。
「使ってもらえれば必ず良さが分かるはず、売り方が良くないのではないだろうか。」とも考えています。
製品を市場投入した途端に、営業からの仕様アップの要求が厳しく、無いものねだりばかりで困っています。
十分な開発期間や予算が確保できない中で、ここまで頑張ってきたのにと不満を抱いています。
ある技術担当の言い分を紹介しましょう。
メモ
「何度か営業の言うことを聞いて製品開発をしたが、思ったほど売れないし、市場に投入した途端に新たな仕様を要求してくる。」
「営業は売れない理由を、他社製品に比べ劣っている仕様にのみフォーカスして、自社が秀でている仕様を評価しない。」
「こんなにコストダウンしているのに、利益が出ないのは営業が安値で売っているからだ。」
摩擦3:感情的なお互いの不満
これまで説明してきましたが、営業にも技術にもそれぞれ不満があるのです。
そのため、お互いに相手の事情や立場を考慮せず、短絡的な考えだけでは対立しかうまれません。
それがエスカレートしていけば、やがて決定的な対立となってしまいます。
そうなったら、決して良い製品は生まれず、そして営業は真剣に売ろうとしません。
これでは会社にとっても、自分たちにとっても、大きなマイナスになります。
技術部門が自社の強みを生かしたよい製品を開発して、その製品のよさを営業が理解して積極的に販売し、それを使った顧客が満足してよい評判を発信してくれます。
こんなサイクルで自社製品がますます売れて、多くの利益を生み出すことが理想です。
営業と技術、その立場の違いは結構大きく、感情が出てきてしまうとなかなか歩み寄ることは難しくなります。
摩擦4:商品に対するお互いの「思想」の違い
営業が技術に対して反発する理由の1つが、「プロダクトアウト」です。
技術部門からの勝手な発想で商品開発・生産された製品を、販売しなくてはならないと感じることです。
メーカーの営業なので仕方がないと言えばその通りなのですが。
顧客のことをまるで分かっていないと、営業がボヤいている姿が目に浮かbます。
一方、技術が営業に不満を持つ理由の1つが、「マーケットイン」です。
営業から伝えられた、市場や顧客ニーズを重視して商品の企画・開発を行っても、なかなかヒット商品にならないことです。
いくら営業が偉そうに言っても、製品が売れなければ、市場や顧客のことを分かっていないと、技術部門から不満が漏れてきます。
以上のように、営業と技術の間に信頼関係が無いと、せっかく新製品を開発しても疑心暗鬼が先行して、思ったほど拡販できない怖れがあります。
ところで、「プロダクトアウト」も「マーケットイン」も、どちらも製品開発・販売では重要な思想であることをお断りしておきます。
営業と開発の対立は、ディスカッションで解決せよ
ここからは、営業と技術の対立をプラスに転換するための「2つのディスカッション方法」について解説していきます。
お互いをいかに理解し協力関係を構築できるか、シナジーを発揮できるかがポイントになります。
1. まずはお互い事実に基づいて「アウトプット」
先ずは営業部門と技術部門が、腹を割ってディスカッションする場を常設しましょう。
実際には、定期的なミーティングを行えばよいでしょう。
議題は、「なぜ〇〇は失敗したのか」、「市場投入した新製品について」、「次期製品について」などです。
お互いに率直な意見を交わすことが重要です。
何が良かったのか、悪かったのか、犯人探しではなく前向きなディスカッションをしましょう。
価格設定、プロモーション、仕様、デザインなどについて、同じ会社の営業部門と技術部門だということを、常に忘れず話し合いましょう。
大事なことは、営業も技術も自社製品を売って、もしくは買ってもらって利益を得ているということです。
接待費も、開発費も、そして自分たちの給料もそこから出ているということです。
どうしたら、利益を最大化できるかという視点でディスカッションしましょう。
お互いの考えを理解しようという姿勢が大切です。
2. より良い解決策や落とし所を見つけるディスカッション
常にディスカッションの場を持つことで、お互いの理解が深まります。
しかし、営業と技術とは立場が違うので、どうしても対立点は残ります。
従って、決して無理に理解したつもりになる必要はありません。
ディスカッションの場で、対立する意見を徹底的に出しましょう。
営業と技術は発想が違うので、意見がかみ合わなくても構いません。
むしろ、対立点から全く新たな発想が出てくる場合があるのです。
お互いの意見を否定するのではなく、認めようという姿勢が大切です。
営業は顧客のニーズだけでなく、こうすれば売れる可能性が高い、ヒットするという、あまり論理的ではないけど、肌感覚のようなものを持っています。
一方、技術は現実的な発想が中心で、自社が持つ技術や設備の限界を知っています。
つまり、技術部門だけで発想すると、自ずから現実的な仕様となり、将来大ヒットするような製品はなかなか生まれません。
多少無茶な発想であっても、営業が思っている理想の製品なら、市場にインパクトを与えるでしょう。
開発費と時間をかけて新製品を市場投入するのですから、しっかりディスカッションし、営業の意見を取り入れてみてもよいでしょう。
最後は営業も開発もONE TEAM
ディスカッションの場を上手く活用できたら、次はチーム活動を検討しましょう。
新製品開発やバージョンアップを行う際に、営業を含めた新チームを編成してみるのです。
主体は技術部門ですが、製品のコンセプトやデザイン、そして仕様を決定する際に、営業の参加を条件に入れましょう。
参加する営業は誰でも良いわけではなく、トップ営業マンから人選します。
過去に営業の言うことを聞いて、痛い目に遭った技術担当にはアレルギーがあると思いますし、それは当然のことです。
しかし、これからの製品開発では競争力を高めるために、再度営業の発想力を活用してみませんか。
リスクを取っても市場にインパクトを与える製品の開発を、状況に応じて選択しなくてなりません。
「ONE TEAM」という言葉がります。
2019年のラグビー日本代表のスローガンです。
その意味は、「出身地や文化、様々な背景を持ちつつも、その違いを乗り越えて一つに結束したチーム」です。
営業と技術も、その違いを乗り越えて1つにまとまった強いチームになりましょう。
最後は「ONE TEAM」で、魅力的な製品を世に送り出してください。
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