近年注目を集めているジョブ型雇用。
当記事ではそのメリット・デメリットを従業員と会社のそれぞれの視点から解説していきます。
ジョブ型雇用が注目される背景として、社会情勢の変化が一番の要因ではないかと言われています。
終身雇用制度の廃止、年功序列体制の維持の難しさなど、いわゆるメンバーシップ型と言われる雇用方法に限界が来ています。
今後日本でも当たり前となってくる、ジョブ型雇用のメリット・デメリットを抑えて転職の際には検討材料の一つにしてください!
目次
ジョブ型雇用の会社とは?
ジョブ型雇用のメリット・デメリットを解説する前に、そもそもジョブ型雇用がどのような雇用方法なのかについて紹介していきます。
また、ジョブ型雇用と日本の主要な雇用方法であるメンバーシップ型雇用についての違いも合わせて紹介していきます。
ジョブ型とメンバーシップ型の違い
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについて簡単に紹介していきます。
基本的な考え方として、ジョブ型雇用は業務に対して人を配置しますが、メンバーシップ型雇用は人に対して業務を配置します。
ジョブ型雇用は業務をベースにするため、絞られたタスクに集中できるのでメンバーシップ型と比べて生産性向上が見込めます。
逆にメンバーシップ型雇用は、人に対して仕事を配置するのでジョブローテーションやメンバー感の仲間意識を醸成しやすくチームワーク向上を狙うことができます。
ジョブ型が注目を集める理由
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用について何となく理解できたところで、
ジョブ型雇用が近年注目を集める理由について述べてます。
それは、ジョブ型雇用のメリット「生産性向上」にあります!
日本のGDP(国内総生産)は、諸外国と比べ成長が鈍化しており停滞していることはニュースなどでよく目にするかと思います。
国内市場が伸び悩む一方で、企業は成長を続けなければ事業存続が厳しいため、常に生産性の向上が課題となります。
一昔前と違い、”生産性を気にせずに働けば働くほど成果が得られる時代”ではなくなってきているのです。
このような背景から「生産性向上」が期待できる、ジョブ型雇用が注目されています。
ジョブ型雇用の会社に入るべき?
ジョブ型雇用のメリットが見えてきたかと思いますが、ここで極論、「ジョブ型雇用を導入している会社に入るべきかどうか」についてここでは話していきます。
どういう人がジョブ型雇用に向いていて、どのような人は避けておいた方がいいのか解説します。
キャリアプランを考えた入社
ジョブ型雇用のメリットとデメリットだけを検討しているだけでは、入社すべきかどうかを考える上では不十分となります。
なぜなら入社すべきかどうかは、ご自身のキャリアプランによるからです。
キャリアプランとは「自分の将来に対するビジョンや目標とする自分像」などを明確にした「計画」を指します。
要するに「将来の夢から」逆算した「行動計画」です。
基本的にはキャリアプランを計画して行動することで、人生をコントロールできるようになります。
何年先のキャリアプランを考えるべきか?
ジョブ型雇用のメリットとデメリットを考慮すると、転職の考え方に深みがでてくるかと思います。
デメリットでも述べましたが、ジョブ型雇用の企業に入るときには注意点があります。
それは何年先のキャリアプランを考えておくべきかということです。
結論から言うと、5年先のキャリアプランの見通しが立っているなら問題ないでしょう。
入社面接で「5年後の自分」について質問されることが多いことから、5年後の未来を考えておけばOKと言えるでしょう。
将来設計は大切ですが、キャリアプランを考えすぎて前に進めないといったことがないようにしましょう。
会社から見るジョブ型雇用のメリット・デメリット
ここでは会社から見た、ジョブ型雇用のメリット・デメリットについて解説していきます。
ジョブ型雇用を採用している企業はメリットばかりが重視されがちですが、デメリットも存在するので転職する際にはしっかりと理解しましょう。
メリット1.即戦力の雇用に繋げやすい
一つ目のジョブ型雇用のメリットとしては、即戦力の雇用に繋げやすいことです。
中途社員や第二新卒でメンバーシップ型雇用企業は人に仕事を配置する必要があります。
未経験であったり、その業務領域で実績がなくても仕事を任されることがあります。
ジョブ型雇用の場合は、業務に人を配置するため実績や経験を元に採用活動を進めることが可能です。
もちろん未経験者の採用をしていることもあり、その場合は育成プログラムがあったり、メンターを付けたりと手厚い体制を用意していることがあります。
短期間で従業員を育てることで、業績を上げていけるのでしょう。
メリット2.生産性の向上
ジョブ型雇用のメリットの二つ目は、生産性の向上です。
再三述べてきましたが、ジョブ型雇用が注目されている一番の理由は「生産性」です。
基本的に人は、同じ業務を繰り返し行うことで、業務効率化が見込めます。
メンバーシップ型雇用だと、社内でのキャリアパスを描く必要上、ジョブローテーションを行うことが求められます。
未経験の特に中途雇用では、事前に社内体制を伝えてミスマッチを防ぎましょう。
一つの業務に集中することで、能率アップを図れるのはジョブ型雇用の大きなメリットです。
デメリット1.配置転換が難しい
最初のジョブ型雇用のデメリットは配置転換が難しいことです。
ジョブ型雇用は業務範囲を明確に定める為、別の業務をお願いすることは勿論、ポジションチェンジを依頼するのもメンバーシップ型と比べるとハードルが高くなります。
個人の能力が現在の能力じゃない方が活かしやすいと企業が判断しても、異動を打診するのが憚られます。
もちろん、会社の要望と本人の希望がマッチした場合には、配置転換もありえますが基本的には一つの業務を行うことだけを考えた方が無難でしょう。
デメリット2.チームワークが生まれづらい
チームワークが生まれづらいこともジョブ型雇用のデメリットの一つです。
ジョブ型雇用のメリット部分でも触れましたが、「自分の業務に集中して生産性向上」に繋げていきます。
しかしチームワークを醸成するには、他部署や関わる人との業務内容を把握することが肝要となります。
業務が分断されやすいジョブ型雇用だと他部署との関わりが薄くなりやすく、業務把握をするのがどうしても困難になります。
その為、チームワークが生まれづらくなり、旧来のメンバーシップ型で期待するような「助け合いや相手を思いやる」行動が少なくなるでしょう。
従業員から見るジョブ型雇用のメリット・デメリット
企業から見たジョブ型雇用のメリット・デメリットが分かったところで、従業員からの視点でもメリット・デメリットを解説していきます。
従業員の目線だと主にキャリアプランが重視されるので、まずはご自身のキャリアを見つめなおして将来設計を立てたうえで行動していきましょう。
メリット1.専門性がつく
従業員から見たジョブ型雇用のメリットは、専門性がつくことです。
ジョブ型雇用だと業務に集中しやすい環境が用意されている場合が多いです。
一つの業務に集中できるというのは、他の業務を行う機会が少ないため専門性を高めることに直結します。
プロレベルになるために「1万時間の法則」というものがあります。
マルコム・グラッドウェル氏がプロやエキスパートになるためには、一つの物事に1万時間を費やす必要があると述べて一躍有名になった法則です。
通常であれば他の業務や配置転換などで、同じ業務を極めるのは難しいのが現状です。
しかしジョブ型雇用であれば業務範囲をハッキリとさせることができるので、メンバーシップ型と比較すれば容易となります。
専門性が高くなるというのは、キャリアプランの上でも重要なので、自分で極めたいと思った仕事があればジョブ型雇用を活用してその道をプロを目指すのもいいでしょう。
メリット2.自分のやりたいことに集中できる
ジョブ型雇用のメリットは他にもあります。
それは、「自分のやりたいことに集中できる」ことです。
“好きこそものの上手なれ”という言葉がある通り、自分が好んで取る行動は自然と上達するものです。
中小企業では、営業を担当していても経理や人事などを行うことは少なくありません。
大企業だと数年に一度の配置転換や部署移動などが予告なく発生したりと、好きな仕事をずっとできる状況を維持するのは至難の業です。
ジョブ型雇用であれば、事前にジョブディスクリプション(職務記述書)に基づいて業務を定めることが可能なので安心です。
デメリット1.他職種の経験が積めない
従業員から見るとジョブ型雇用はメリットが多いように見えますが、デメリットも存在します。
一つ目のデメリットは、他職種の経験が積めないことです。
キャリアプランを描くことが大切であるということは前にお伝えしましたが、本人の予想しないところに成功が隠れていることもあります。
キャリアプランが大切と述べているのに少し矛盾しているようですが、計画にはないことがキャリアの成功に繋がることもあります。
その根拠になっているのが心理学者のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「計画的偶発性理論」というキャリアの考え方です。
この理論では意図しないことがキャリアのターニングポイントとなり、それが成功へと繋がると述べています。
予測不可能な事が起きる現代では、意図しないキャリアも大切にしなければなりません。
その為、ジョブ型雇用だとそういった偶発的なことが発生しづらい環境にいることを意識して行動していく必要があります。
【まとめ】
ジョブ型雇用のメリット・デメリットを従業員と企業目線で解説しましたがいかがでしたか?
従業員目線ではジョブ型雇用の会社に入ると一つの業務に集中しやすい環境が手に入りますが、幅広い経験を得るのが難しくなります。
一つの分野でプロフェッショナルを目指すには、1万時間必要ですが、キャリアの成功という意味では偶発性が重要という考え方もあります。
転職活動をする時は、キャリアプランをしっかりと考えた上で自分に合った雇用形態を選択しましょう。
どちらの道を選んでも間違いではありません、キャリアをきちんとプランニングし前向きに行動していきましょう!
どんな雇用形態が自分に合っているか知るには、エージェントに相談してみるのも大切。